過去への郷愁?

中教審の答申にある「国を愛する心」には、戦前への郷愁が見え隠れします。
しかし、どうも勘違いがあるように思われてなりません。


私自身、敗戦によってあまりにも過去を否定しすぎたことを大問題だと考えています。
戦前の日本人の方が今の日本人より、比べものにならないほど意欲に溢れ、規範意識も強かったと思います。
しかし、その源泉が「愛国心」だとするのは何かずれているような気がしてなりません。


ラフカディオ・ハーンなど、まだ日本人に国がどうのという意識がそう強くない時代に、日本人はすでに海外から賛嘆される美意識を持っていました。
もっと言い換えれば、日本人の性質の大半は、江戸時代に育まれたといって過言ではないでしょう。
江戸時代に培われた勤勉さ、器用さ、意欲、覚悟、その他諸々の豊かな人的資源が、維新以後100年に渡る繁栄の礎となったといえるのではないでしょうか。
愛国心は、西欧列強に飲み込まれないようにするための「型」ではあっても、原動力的なものではないでしょう。


残念ながら、戦前の基礎的条件は、今の日本にはほとんどありません。
その基礎的条件を失った状態で、表面的な愛国心だけを取り戻したところで、過去に戻れるはずもありません。
国がどうのという意識が存在する前から、何故日本人が強い正義感を持っていたのか、根っこの所を見つめ直すべきように思います。